物産事業者様の各種ショップツールの制作事例をご紹介します。

今回ご紹介する喫茶ケルン様からのオーダーは、パッケージデザインをはじめ、物産展出店に係るオールインワンのショップツール制作です。具体的には、ロゴマーク、パッケージ、ポスター、リーフレット、のれん、テーブルクロス、のぼりの制作を行いました。

対象商品は、長崎県島原市の郷土甘味「かんざらし」です。島原市は、雲仙普賢岳の伏流水に恵まれた土地であり、市街地の随所に湧水スポットが点在しています。一日二十万トン以上湧出する豊富な島原湧水は、飲料、料理、共同洗い場など市民の生活用水として利用されるとともに、鯉の泳ぐまちなど、観光名所の清涼感や美しさを際立てており、「水都」と呼ばれる由縁となっています。

そのような島原湧水の美味しさをシンプルに味わえるのが、郷土甘味「かんざらし」です。白玉粉で作った小さな団子を湧水で冷やし、湧水で丁寧に仕込んだ甘い蜜に浮かべていただく、素朴でどこか懐かしい涼菓です。

喫茶ケルン様は、島原湧水の観光名所「鯉の泳ぐまち」のすぐ近くに位置する城下町らしい伝統建築物を活かした古民家喫茶店で、島原市内で美味しいかんざらしを提供する名店の一つです。数年前より東京の長崎物産展で、かんざらしのイートイン、物産販売を開始し、前職からのご縁により、ショップツールの制作を私が担当することとなりました。

まず、かんざらしという郷土甘味について読み解くこととしました。島原半島は、天高くそびえる標高1,483mの雲仙山系を中心に据えた勾玉状の半島であり、山麓から裾野へ広がる大地は、三つの海(有明海・島原湾・橘湾)に囲まれています。天空、火山、山麓、平野、三つの海へとなめらかにつながる大パノラマの特徴的な自然景観が特徴で、日本における世界ジオパーク第一号として認定されています。1792年 眉山大崩落という火山活動により地脈が刺激され、麓に広がる島原の城下町の各所で清らかな水が湧出することとなりました。島原半島のダイナミックな自然のストーリーを一つの象徴として見立てたものが、島原湧水。そして、かんざらしとは、島原半島の自然の象徴である湧水を涼やかに味わうための体験型の甘味であると捉えました。

島原は、建物の高さも控えめで、明かりが少なく、星の輝きが美しく見える場所です。そして、月も実に美しく、くっきりと見えます。有明海の向こう側から現れた月は、どんどんと天高くのぼり、湧水に光を落とします。その真円は、湧水を丸く切り取り、輝かせます。これが、かんざらしの白玉のように思えます。島原湧水を丸く切り取り、輝くような甘い蜜をまとわせる。このイメージから、「島原の湧水に浮かぶ水の月=島原水月」=「かんざらし」というテーマを定めました。

ロゴマークは、精神的価値の表現です。上記のように捉えたイメージから、かんざらし、月、山、水面の光、喫茶ケルンのキーワードを合わせて、喫茶ケルン様の新しいロゴマークを制作しました。月及びかんざらしの円を頭上に浮かべ、島原半島の象徴である雲仙普賢岳を中心に据え、その裾野に広がる湧水の水面に光を落とす。光の揺らぎには、喫茶ケルンの伝統建造物のシルエットを朧げに描き、月光の映り込んだ水面の波紋と同化させました。

制作したロゴマークのイメージを喫茶ケルン様と共有し、そのほかのショップツールについてもテーマがぶれないよう、随時話し合い、丁寧に確認しながら、各種制作しました。長崎県内の販売に関しては、別投稿でご紹介した「島原半島ツーリズムマーケット」が初であり、その後、百貨店の物産展にも出店し、各方面よりご好評いただいています。今年はコロナ禍により首都圏への催事出店は叶いませんでしたが、来年の催事では制作したショップツールを追い風に、首都圏のお客様にも商品の魅力がより広く伝わるようになればと願っています。

ショップツールは、商品の良さをお客様に効果的に伝える優秀な販売員です。商品の質と表現力は、物産ビジネスの両輪となります。良いものが良いのものだと正しく伝わるように、REGIONAL ARKHEは、根源的な価値の整理から、デザインという表現のサポートまでお客様のビジネスのお手伝いをいたします。